Senbazuru.

292 pages

Japanese language

Published March 16, 1997 by Shinchousha.

ISBN:
978-4-10-100123-4
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父の女と。女の娘と――。 背徳と愛欲の関係を志野茶碗の美に重ねた、川端文学の極致。

鎌倉円覚寺の茶会で、今は亡き情人の面影をとどめるその息子、菊治と出会った太田夫人は、お互いに誘惑したとも抵抗したとも覚えはなしに夜を共にする……。志野茶碗がよびおこす感触と幻想を地模様に、一種の背徳の世界を扱いつつ、人間の愛欲の世界と名器の世界、そして死の世界とが微妙に重なりあう美の絶対境を現出した名作である。 他に「波千鳥」(続千羽鶴)を収録。詳細な注解を付す。

【目次】 千羽鶴 森の夕日 絵志野 母の口紅 二重星

波千鳥 波千鳥 旅の別離 新家庭

注解 解説 山本健吉 解題 郡司勝義

本書「解説」より この小説を読みながら、一体ヒロインは太田夫人なのか、志野の茶碗なのかと言いたくなるのである。あたかも茶碗の精であるかのように、彼女には一種の妖気が立ちこめている。夫人の死後、菊治がその肉体を思い浮かべようとしても、甦ってくるものは、匂いに酔うようなその触覚だけである。この作品の世界は、けっきょく触覚を媒介として組み立てられた超現実の美的世界である。 ――山本健吉(評論家)

川端康成(1899-1972) 1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋で自死。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。

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